4.4 モータの動作



・モータドライバIC

 モータの回転を制御するためには,モータドライバICを使用します.ここでは,モータドライバICに内蔵されている回路について説明します.

 モータドライバICに内蔵されている回路はHブリッジ回路という回路です.この回路に制御信号を入力することで,モータの回転する方向を変更することができます.

Hブリッジ回路: この回路はモータを中心に回路がアルファベットのHのようになっていることから,Hブリッジ回路と呼びます.この回路には4つのトランジスタがついています.これらトランジスタは,信号によってON/OFFを切り替えることができるスイッチです.

 図4.6のA,DのトランジスタがONとなるとき,電流はモータ電源→トランジスタA→モータ→トランジスタD→GNDの方向に流れます.次に,B,CのトランジスタのペアがONとなるときモータに流れる電流の向きは先ほどとは逆方向,つまり,モータ電源→トランジスタB→モータ→トランジスタD→GNDの方向に流れます.モータに流れる電流の方向が変わるので,モータの回転方向をコントロールできます.Hブリッジにはこの他に2つのモードが存在します.1つはストップモードと呼び,これは4つ全てのトランジスタがOFFの状態にするので,モータには電流が流れません.これはDCモータの端子をどこもつながない状態とほぼ同じで,手で軸を回せば抵抗無くまわせます.もう1つは,ブレーキモードと呼びます.これはトランジスタのCとDをONとした場合ですが,GNDを経由して2つのモータの端子がショートした状態になります.このときは軸を手で回すと抵抗力を感じると思います.この原理は電磁誘導によるものですが,詳しい説明は省略します.また,実際に組まれるHブリッジはもっと複雑な回路を構成しています.

ブレーキとストップの違い: ブレーキはモータの軸を回すと抵抗力を感じます.ストップは軸をまわすと抵抗無く回ります.

モータ制御の方法

PWM機能を使用した,モータの制御をPWM制御といいます.モータを実際に制御するときは,PWM信号をモータドライバICに入力し,モータドライバICがモータの電源を高速でON/OFFを行います.PWM制御とはモータに流れる電流をこの方法でコントロールする制御法です.
  本実験で使用するモータドライバIC(TA8428H)は,PWM信号を入力することにより回転速度(厳密にはパワー)が調整できます.それと同時に,2つの制御信号(制御信号0,1)を入力することで,以下の表のように4種類の回転状態を切り替えて制御できます.すなわち,制御信号0,1の両方が1のときモータにブレーキ,制御信号0,1にそれぞれ1,0と入力したときは正転,0,1と入力したときは逆転,0,0と入力したときはストップ(フリー)となります.
  H8/3052FではITUのCH0〜4を使用し最大5チャネル分のPWM信号を出力することができますが,本実験ではモジュールボード基板の設計上CH0〜CH3の4チャネルのみモータドライバICにつながっており,モータを使用することができます.

表4.1 モータドライバIC(TA8429H)のロジック表

制御信号0 制御信号1 モータ
1 1 ブレーキ
1 0 正転
0 1 逆転
0 0 ストップ
モータドライバICへ送る制御信号は,H8のポート1データレジスタP1DR:H'FFFFC2)から出力します(基板上で配線されています).本実験で作成したロボットコントローラにはモータドライバICを4つ搭載していますが,P1DRの出力と4つのモータドライバICへの入力の関係は次の表のようになっています.bit番号の大きい方が制御信号1となります.
P1DRのbit 7 6 5 4 3 2 1 0
モータドライバ モータドライバIC3 モータドライバIC2 モータドライバIC1 モータドライバIC0
制御信号 制御信号1 制御信号0 制御信号1 制御信号0 制御信号1 制御信号0 制御信号1 制御信号0
初期値 0 0 0 0 0 0 0 0
例:モータ0のみ正回転させる 0 0 0 0 0 0 0 1

モータドライバIC0: bit0,1
モータドライバIC1: bit2,3
モータドライバIC2: bit4,5
モータドライバIC3: bit6,7

次の課題4.3ではPWMのプログラムにモータ制御信号を加えたMOTORプログラムの書き込みを行い,モータを動作させます.


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